風疹のこと

ジカ熱に慌てる前に眼前の風疹対策を

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最近、中南米でジカウイルス感染症が流行し、風疹と同じように胎児に影響を及ぼすことが指摘されています。日本でも感染者が確認された[1]ということですが、風疹とは異なり人から人への感染はほとんどなく季節も蚊の少ない冬にもかかわらず報道が煽り気味なのが少し心配です。医療関係者からは「ジカ熱よりも風疹の対策を」という声もあがっています[2]

最近、神奈川県の抗体検査(保健所設置市を除く地域で実施)で2015年4月~12月に受けた984人のうち約4割にあたる352人が抗体不十分と判定されていたことが明らかになりました[3]。また、赤すぐ総研による「乳児と母親の予防接種に関する実態調査(2015)」においても、2181人中、妊娠前あるいは妊娠中に風疹の抗体検査を受けた人は全体の75%で、このうち22.6%が抗体不十分と判定されており、また、抗体不十分と判定された人の半数近くが何もしていないという実態が明らかになっています[4]。以前公開された東京都のデータ[5]と併せて考えると、まだ再流行のリスクは残っていると考えたほうがよいでしょう。

2020年までに風疹を排除(elimination)する目標がありますが、それはあくまでもマイルストーンのひとつです。日本で風疹を排除してそれで終わりというわけではありません。海外からウイルスを持ち込まれる危険性があります。はたしてわが国は今後排除状態を何年維持することができるのでしょうか?排除したあとに「風疹にかかっても大丈夫だよね、予防接種なんて要らないよね」なんてことを言い出す人が増えれば再流行を起こすリスクが高まります。排除状態を維持するためには後の世代にしっかりと教訓を残すことが重要です。

2013年の流行もすでに記憶が薄れつつあり、抗体検査やワクチンの助成利用者をいかに増やしていくかが今後の課題です。新年度も、排除目標を確実に達成していくための様々な取り組みがあることを期待しています。

  1. ジカ熱の感染を確認 川崎市の10代男性』、NHKニュース、2016年2月25日
  2. 日本は”国際的懸念”のジカより風疹予防を』、Medical Tribune、2016年2月24日
  3. 風疹:妊婦守って 昨年4〜12月・984人検査、「抗体不十分」4割 例年春先に流行、県が予防接種呼びかけ /神奈川』、毎日新聞、2016年2月9日
  4. 乳児と母親の予防接種に関する実態調査(2015)』(PDFファイル)、株式会社リクルートライフスタイル、2015年9月29日
  5. 平成26年度風しん抗体検査事業実績』、東京都、2015年9月18日