情報保障の現場で音声認識ソフトの活用がすすんでいます。5年ほど前まではまだ使えるかどうか分からないという状況でしたが、実用に耐えられるレベルになりつつあります。最近では「講演・講義の音声から字幕を付けるシステムを開発 -放送大学の講義で90%以上の認識率-」という京都大学の研究成果が話題になりました。

アプリケーション開発には複数の企業が取り組んでおり、そのひとつに「UDトーク」というスマホアプリがあります。昨日の「ろうを生きる難聴を生きる」という番組でも紹介されました(会話が見える!―人をつなぐ音声認識アプリ―)。無料で気軽に試せるのがポイントで、データがサーバ上に保存されない法人プランもありミーティングの際に使用している会社もあるとのことです。

UDトークなどの音声認識アプリを活用すると、サポートに必要な人数を減らすことができ、また多くの情報量を確保できるというメリットを得られます。従来は全て手入力する必要があり常に他者のサポートが必要でした。そのサポート担当者が本来仕事をするべき時間を割いて対応してもらうことになりますし、要約筆記者を頼むのにもコストが掛かっていたのですが、やり方を工夫することで一人でミーティングに参加することも可能になります。

また、他者の手を介すとフィルタがかかってしまうのも問題となっていました。サポート担当者の立場で「これは要らないから省いてもよいだろう」と判断された情報が業務を遂行する上で必要な情報であったり、あるいは逆に、「これは必要な情報だ」と判断された情報が自分にとってはあまり意味のないものであったりするかもしれません。音声認識アプリを使えば、聴覚障害者自身が自分で必要な情報を取捨選択することができるようになります。

一方で、話声が誤って認識されることがあるのがデメリットです。認識率が低いと従来とほとんど変わらないどころが、もっと悪いことすらあります。ミーティング参加者には音声認識されやすい話し方を心がけることや同時に話さないことなどを徹底する必要があります。この点に関しては工夫で補うことができ、逆にミーティングを「見える化」することで効率化がすすみ部署全体にポジティブな効果をもたらすことができると思います。

また、複数人の雑談への対応は困難という限界もあります。聴覚障害者にとっては雑談が最も困難を感じる場面です。ランチタイムでは、騒音があり、しかも両手が塞がっている状況下で予測不可能な会話が発生します。そのような場での雑談は、仕事を気持ちよく進めるための潤滑剤のようなもので、業務のヒントを得たり同僚の新たな側面を発見したりすることができ非常に重要な情報源といえるのですが、食事中にスマホを持って喋ってくださいとは言いづらいですよね。テーブルにポンと置くだけなら簡単でいいのにと思います。

いつでも、どこでも、会話が見える。そんな時代が早く来てほしい。ミーティング、そして仕事以外での雑談に参加できないということがキャリアアップを妨げる一つの要因になっています。いろんな場に気軽に出て行けるようになるといいなあと思います。